299 — 252 Ma
ペルム紀 — 大量絶滅
史上最大の大量絶滅が海洋種の96%を消し去り、パンゲアが支配する。
パンゲア
約2億520万年前、ペルム紀末のパンゲア縁辺に広がる閉鎖的な浅海盆では、黒い硫化泥に覆われた海底にわずかな二枚貝クララヤ(Claraia)が点在し、衰弱したフィリプシア類三葉虫プセウドフィリプシア(Pseudophillipsia)がほとんど動かず、褐緑色に濁った水中にはクラゲ類が力なく漂っていました。水は成層して酸素に乏しく、海底近くでは硫化水素に富む「 euxinia(有硫化・無酸素環境)」が広がり、生物の多い海底生態系はほぼ崩壊していました。これは地球史上最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」のさなかの光景で、シベリア・トラップ火山活動に伴う急激な気候変動と海洋無酸素化が、海の命を静かに追い詰めていたことを物語っています。
後期ペルム紀、約2億600万〜2億520万年前のパンタラッサ海縁では、全長約6メートルのヘリコプリオン(Helicoprion)が、下あご奥に巻いた鋸のような歯列で手のひら大のアンモノイド、アガチケラス(Agathiceras)の群れに襲いかかります。緑青色の外洋には、微小でウナギ状のコノドント動物や銀色の古鰓類魚も漂い、散った殻片と泡の筋が一瞬の捕食劇を物語ります。これは超大陸パンゲアを取り巻く海で、地球史最大の大量絶滅「ペルム紀末の大絶滅」直前に広がっていた、失われゆく海洋生態系の一場面です。
約2億530万年前、パンゲア東縁の古テチス海の遠浅の炭酸塩棚では、現代のサンゴ礁とは異なる、石灰化した海綿類と微生物クラストがつくる低い丘状の礁が、澄んだターコイズ色の海に点々と盛り上がっていました。礁の表面には石灰藻、四放サンゴのワーゲノフィルム(Waagenophyllum)、レース状のフェネストレート類コケムシ、そして有柄ウミユリが付着し、その間の海底はプロダクタス(Productus)やネオスピリファー(Neospirifer)などの腕足類でびっしり覆われています。これはペルム紀末の温暖な温室世界に広がった浅海生態系の一場面で、まもなく訪れる約2億520万年前の「大絶滅」によって、こうした礁の共同体の多くが地球史から姿を消しました。
灼けつくような前期ペルム紀(約2億990万〜2億720万年前)のパンゲア赤色層氾濫原では、まだ恐竜ではない単弓類ディメトロドン(Dimetrodon、全長約3.5 m)が、血管に富む帆を揺らしながら季節的な水路の泥岸を忍び足で進み、その浅い濁水には大型両生類エリオプス(Eryops、約2 m)が半身を沈めて待ち伏せしています。ひび割れた赤い泥岩、シルト岩、砂岩に刻まれた乾湿のくり返しは、強い季節性をもつ内陸盆地の環境を物語り、岸辺にはトクサ類や種子シダ、まばらな初期裸子植物が点在します。これは“グレート・ダイイング”として知られるペルム紀末大量絶滅(約2億520万年前)よりもはるか前、単弓類と大型両生類が川辺の捕食者として君臨していた、深い時間の一場面です。
約2億520万年前、ペルム紀の終わりに北方パンゲアを引き裂いたシベリア・トラップの巨大噴火では、無数の割れ目火口から高温のソレアイト質玄武岩が川のように流れ出し、黒く焼けたボルツィア型針葉樹やコルダイテス類の森をのみ込みました。画面には、赤褐色の堆積岩の上を幾重にも広がる溶岩流、硫黄を含む暗い噴煙、そして熱い地表に降り注ぐ酸性雨が描かれ、当時の過酷な環境が見て取れます。こうした洪水玄武岩の噴出は大量の二酸化炭素や二酸化硫黄を放出し、急激な温暖化・海洋酸性化・酸素欠乏を引き起こして、地球史上最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」の主要因となりました。数百万年にも満たない短い地質学的時間のうちに、海洋種の大半と多くの陸上生物が姿を消し、地球は深い時間の中でも最も壊滅的な転換点を迎えたのです。
ペルム紀後期、およそ2億600万〜2億520万年前のゴンドワナ南部では、グロッソプテリス(Glossopteris)が灰褐色の幹を立ち上げ、濃緑色の舌状葉が霧のこもる林冠をつくっていました。足元には泥炭質の黒い湿地土壌、落ち葉、シダ類やトクサ類、タンニンで暗く染まった浅い水たまりが広がり、沖積性の細粒シルトと泥の上に発達した低湿地の森が見てとれます。こうしたグロッソプテリス植物群は南半球のペルム紀を代表する植生でしたが、この静かな森もまもなく訪れる約2億520万年前のペルム紀末大量絶滅によって大きく失われることになります。
夕暮れの乾いた氾濫原では、こぶ状に装飾された頭骨をもつパレイアサウルス類スクトサウルス Scutosaurus karpinskii の群れが身を寄せ合い、その脇でサーベル状の犬歯を光らせたゴルゴノプス類イノストランケビア Inostrancevia が低く身構えて迫ります。これは約2億520万年前、後期ペルム紀末のロシア地域を含む北パンゲアの光景で、赤色の泥岩・シルト岩からなる半乾燥の氾濫原は、巨大火山活動に起因する温室化と環境悪化のただ中にありました。ひび割れた泥、塩類に富む浅い水たまり、まばらな針葉樹や種子シダが広がるこの世界は、まもなく地球史最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」に呑み込まれる直前の、生態系の緊張に満ちた一瞬を伝えています。
後期ペルム紀、約2億600万~2億520万年前のパンゲア内陸では、海から遠く隔てられた極度に乾燥した世界が広がり、風で移動する巨大な砂丘がクリーム色、黄土色、鉄錆色の縞をなして重なっていました。砂丘間の低地には干上がったプラヤの泥割れや白い岩塩・石膏の殻が残り、わずかに湿り気のある洗掘地に、鱗葉をもつ針葉樹ウォルキア属(Walchia)やウルマンニア属(Ullmannia)がまばらに根を下ろしています。こうした赤色砂岩と蒸発岩の景観は、超大陸パンゲアの強烈な大陸性気候を物語り、やがて約2億520万年前のペルム紀末大量絶滅「グレート・ダイイング」へと続く過酷な地球環境を感じさせます。
極地
約2億600万〜2億520万年前、後期ペルム紀のゴンドワナ極圏では、地平線すれすれの真夜中の太陽に照らされた広大な氾濫原に、舌状の葉をもつグロッソプテリス類(Glossopteris)が高さ10〜18 mの森をつくっていました。足もとにはシダ植物やトクサ類のフィロテカ(Phyllotheca)が茂り、黒い泥炭質の三日月湖やゆるやかな流路が、石炭のもとになる湿地環境を示しています。ここは恐竜や花の咲く植物が現れる前の世界で、長い夏の白夜と寒冷な季節に適応したゴンドワナ植物群が、地球史最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」直前の深い時を静かに物語っています。
後期ペルム紀末(約2億520万年前)、ゴンドワナ極域の薄暗いグロッソプテリス林床では、剣歯状の犬歯をもつゴルゴノプス類が、ずんぐりしたディキノドン類 Dicynodon に襲いかかる一瞬が展開していました。足元には舌形の Glossopteris の落ち葉、湿った泥、菌に侵された倒木が広がり、甲虫や翼開長約15cmの原始的なオドナトプテラ類が冷たい薄明かりの中を舞っています。ここは現代の極地のような氷雪世界ではなく、季節的な暗さと寒さに適応した森林生態系であり、まもなく史上最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」によって深刻な崩壊を迎える直前の世界です。
後期ペルム紀、約2億600万〜2億520万年前のゴンドワナ極域では、長い夏の日差しが低く差し込む泥炭湿地に、舌形の葉をもつグロッソプテリス(Glossopteris)の若木と丈の低いトクサ類が群生し、黒褐色の水たまりや朽木の上を初期の甲虫やゴキブリに近いブラットデア類がはい回っていました。空には翼開長約20cmのオドナトプテラ類が透明な翅をきらめかせて舞い、足元では植物遺骸が積み重なって未来の石炭層になりつつあります。これは恐竜も鳥もまだ現れていない、温暖化しつつも季節性の強い「大絶滅」直前の極地世界で、グロッソプテリス植物群が支えた湿潤な生態系の一場面です。
後期ペルム紀の極域浅海、約2億5,300万〜2億5,200万年前の南ゴンドワナ大陸棚では、冷たく薄暗い泥の海底一面に、トゲをもつ腕足類プロダクタス類のProductusやMarginiferaがじゅうたんのように広がり、その間をレース状のコケムシ群体や羽のようなウミユリ、そして小型三葉虫Pseudophillipsiaが静かに行き交っていました。水温はおよそ8〜12℃、深さ10〜25mほどのこの海は、一見おだやかでも、ペルム紀末の大量絶滅「グレート・ダイイング」直前の世界です。まもなく地球史上最大級の危機が訪れ、こうした古生代型の海底生態系の多くは永遠に失われます。
ペルム紀後期、約2億520万年前のゴンドワナ南部の極域大陸棚では、全長約5 mのヘリコプリオン(Helicoprion)が銀色にきらめく古鱗魚類(パレオニスカス類)の群れを切り裂くように追い、頭上には小型アンモノイドのメドリコッティア(Medlicottia)が冷たく薄暗い海を漂っていました。ヘリコプリオンはサメに似た流線形の体と、下あごの奥に収まる特異な“歯の渦巻き”で知られる軟骨魚類で、この海にはプランクトンに富む高緯度の季節的な生産性が反映されています。これは地球史最大の大量絶滅、ペルム紀末の「グレート・ダイイング」直前の光景であり、まもなく海洋生態系の大部分が急激な環境変動によって崩壊していく、まさに深い時間の境目をとらえた場面です。
ゴンドワナ南縁の高緯度浅海に、後期ペルム紀末(約2億520万年前)を生きた冷水性の炭酸塩スポンジ・マウンドが、淡灰色の石灰質泥の海底からわずか1〜2 m盛り上がって見えます。ベージュ色の壺形海綿、ピンク色の被覆石灰藻、レース状のコケムシ群体、まばらな単体サンゴのロフォフィリディウム(Lophophyllidium)が低い生物礁状構造をつくり、その隙間には小型腹足類、クモヒトデ、そして50 cmほどの海綿のそばに寄り添う稚魚の条鰭類が身を潜めています。これは熱帯のサンゴ礁ではなく、砕けた殻片やコケムシ片に富む寒冷〜冷温帯の石灰質堆積環境で、長い極昼のやわらかな光の下に広がっていました。やがてこのような海の共同体も、地球史最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」によって大きく失われていきます。
ペルム紀末、およそ2億520万年前の南ゴンドワナ高緯度の河口では、黄灰色の空から降る酸性雨の下、舌状の葉をもつグロッソプテリス Glossopteris の林が枯れ崩れ、火山灰と炭化した植物片を含む濁流が黒くよどんだ内湾へ流れ込んでいました。岸辺には侵食される泥炭やシルト・砂岩の土手、沖には酸素に乏しい無酸素水塊が広がり、表層は不気味な緑褐色の膜に覆われています。こうした景観は、シベリア・トラップの大規模火山活動に伴う急激な温暖化、酸性雨、海の貧酸素化が、グロッソプテリス植物群や小型のディキノドン類・分椎類までも追い詰めた、地球史最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」の極域での一場面です。
パンサラッサ海
澄んだコバルト色の後期ペルム紀のパンサラッサ外洋で、全長約6メートルのヘリコプリオンが、下あごにだけ巻いた円鋸状の歯列をのぞかせながら、10〜20センチほどの古鰭類魚の群れへ鋭く突入しています。周囲にはメドリコティアやパラケルティテスなど、殻径5〜12センチほどのアンモノイドが漂い、陽光は上層の青から下方の濃い藍へと消えて、果てしない海の深さを感じさせます。ヘリコプリオンはサメに似ていますが、実際には真正軟骨魚類に近い系統で、約2億600万〜2億520万年前、ペルム紀末の大量絶滅「グレート・ダイイング」直前の海で、こうした外洋の捕食者として生きていました。
約2億520万年前、ペルム紀末のパンサラッサ大洋の深海では、ガラス質の殻をもつ放散虫が雪のように静かに沈み、ウナギのように細長い小さなコノドント動物クラーキナ(Clarkina)やヒンデオドゥス(Hindeodus)が、薄暗く酸素に乏しい中層水を漂っていました。海底には放散虫起源の珪質軟泥が広がり、まばらに立つガラス海綿類(六放海綿)が、生命の少ない冷たい深海底の静けさを際立たせています。こうした放散虫の遺骸はのちにチャートのもととなり、この光景は地球史最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」のただなかにあった外洋深海の危機を物語っています。
約2億520万年前、ペルム紀末のパンサラッサ海中央海嶺では、黒くガラス質の枕状玄武岩が裂け目から噴き出す熱水に洗われ、金属硫化物に富む黒煙が硫化物チムニーから冷たい深海へと立ちのぼっていました。画面には、黄鉄鉱を含む黒色〜青銅色の煙突状構造、酸化鉄の褐色被膜、そして熱水の周囲にだけ淡く広がる細菌マットが見え、魚類や大型動物のいない貧酸素の深海底が静かに広がります。こうした場では放散虫のシリカ質堆積物や微生物群集が重要で、後に地球史最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」へ向かう直前の、異様で張りつめた海洋環境を物語っています。
約2億650万〜2億520万年前のパンタラッサ大洋では、黒い玄武岩の海山を覆う淡色の炭酸塩台地の上に、スポンジ‐微生物マウンド礁が浅いターコイズ色の海に広がっていました。画面には、群体サンゴのワーゲノフィルム、レース状に枝分かれするコケムシ、1 mほどの柄をのばすウミユリ、そしてネオスピリファーやトゲの多いホリドニアなどの腕足類が密集し、現代のサンゴ礁とはまったく異なる古生代らしい海底景観をつくっています。こうした海山礁は、外洋に孤立した火山島の頂を生物と微生物が少しずつ石灰質に固めて築いたもので、遠景の深い群青の海は、地球史最大の大量絶滅「大死滅」を目前にしたパンタラッサの広大さと、失われゆく世界の豊かさを静かに物語っています。
約2億520万年前、パンタラッサ大洋の孤立した火山島では、黒い玄武岩の海食崖と柱状節理が白い炭酸塩の浅い棚をはさみ、激しい波しぶきの上にまばらな針葉樹林がしがみつくように広がっていました。崖上に見えるのは、乾燥と塩害に強いペルム紀の針葉樹ウォルキア(Walchia)やウルマンニア(Ullmannia)で、足元の浅海には石灰質の砂や砕けた貝殻が薄くたまり、玄武岩質の海洋島にもわずかな炭酸塩堆積物が発達していたことを示します。これは地球史最大の大量絶滅「大死滅」の直前の世界で、巨大な外洋パンタラッサを縁どる火山活動と、厳しい環境に適応した裸子植物の姿が、失われた深い時間の海岸線を物語っています。
パンゲア西縁のパンタラッサに面した後期ペルム紀末(約2億530万〜2億520万年前)の海岸低地では、乾いた赤褐色の砂地に高さ3〜10 mほどの針葉樹ウォルキア(Walchia)やレバキア(Lebachia)がまばらな林をつくり、その足もとにはシダ類や湿った窪地のトクサ類が点在しています。地表の落枝や球果まじりの litter には、初期の甲虫類やゴキブリ類(ブラットデア類)が小さく動き、被子植物も草もまだ存在しない古生代の陸上生態系を物語ります。遠景には、温暖でやや濁ったパンタラッサの浅い海と、沈み込み帯に伴う火山島弧の黒い影がかすみ、地球史最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」を目前にした、暑く乾いた終末期ペルム紀の世界が広がっていました。
約2億520万年前、ペルム紀末のパンタラッサ海の浅い縁辺では、腕足類や二枚貝の死殻が何メートルにもわたって積み重なり、石灰質海綿と微生物炭酸塩が築いた礁は崩れ、黒くぬめる微生物マットが海底を覆っていました。緑がかった停滞水と赤橙色の霞んだ空は、シベリア・トラップの大規模火山活動に伴う温暖化、海洋の酸素欠乏、そして硫化水素に富む有毒な浅海環境を示しており、地球史上最大の大量絶滅「グレート・ダイイング」のただ中を物語ります。